タイトルの「社労士と税理士の業際問題」とは、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会が平成14年(2002年)に交わした「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」に、
社会保険労務士が給与計算の中で行う「所得税の年末調整」は、税理士の「税務代理」業務に該当し、税理士法が規定する「税理士の独占業務」に違反する、という趣旨の日税連の主張が明記されてしまったという問題です。
しかしこれは、税理士法の一部分だけを抜き出して条文通りに解釈したものに過ぎず、一見正しいように思えますが、
さらに、税理士法第一条(税理士の使命)を加えて税理士法を総合的に解釈しますと、この主張はとんでもない誤りで、
逆に、この主張は、日税連が自ら「税理士の使命」に違反する行為であって、日税連が税理士法に違反している、というのが私の考えです。
なぜなら、ほとんどの税理士は労働社会保険諸法令の専門知識を保有していないため、社会保険労務士の助けがなければ、そもそも「所得税の年末調整」ができないからです。
社会保険労務士であれば、労働社会保険諸法令の専門知識を保有していますので、新たに所得税法(給与所得)の本質的基礎知識と最低2年以上の給与計算の実務経験が必須になりますが、税理士の助けがなくても、適正な「所得税の年末調整」ができるからです。
このため今までは、日税連の主張を無視すれば良い、としてきましたが、
この問題は、20年にもわたって解決されていないため、多くの社会保険労務士が開業成功に必須なのにもかかわらず、あえて給与計算という業務を避けてしまったり、給与計算という業務に自信や誇りを持てずに仕事をしてきたと思います。
そこで、この問題はこのまま放置するのではなく、そろそろ決着をつけなければならないと思うのです。
もちろん、裁判で決着を付ければ一番スッキリすると思いますが、裁判は、時間とお金と手間がかかりますので、どうも気が進みません。
しかし、よくよく冷静に考えてみますと、社会保険労務士は、日税連の主張を全面的に受け入れて、その代わり日税連に全責任を負わせて、給与計算の中で年末調整をしないことにしても、実は何も問題がないと思うのです。
さらに、それだけではなく、これによって社会保険労務士は、給与計算という業務に対して、外部からケチを付けられる恐れがなくなり、社会保険労務士は、堂々と、自信と誇りを持って給与計算という業務ができるようになるのではないでしょうか?
もっとも、給与計算で年末調整をしないことにすると、ちょっと考えただけでも、
地方自治体が住民税の計算をできなくなる心配があったり、
極めて膨大な人数の給与所得者が税務署で確定申告をすることになることが予想されますが、税務署は対応できるのか、等の心配もありますが、
それは、日税連や国税庁が責任を持って考えているべきことであって、社会保険労務士が心配するべきことではありません。
このため社会保険労務士は、給与計算の中で年末調整をしないことにしても、社会保険労務士にとっては本当に何も問題がないかどうか、を慎重に調査検討したうえで、
もういい加減に、日税連に全責任を負わせて、この「社労士と税理士の業際問題」に決着をつけるべきときがきているのではないでしょうか?
この「社労士と税理士の業際問題」について、もっと詳しく知りたい方は、
ウエブサイト「社会保険労務士/社務士定義」を参照してください。
社会保険労務士や社労士受験生の方のご健闘をお祈り申し上げます。
↓↓ をクリックして↓↓このブログのランクアップにご協力をお願いします。